帰路

戦いが終わった


僕らは帰路につく。頭で物語の続きを描いてる
君に会えたら何を言おう。早く会いたい。


鎧の冷たい音。柔らかい土を踏みしめる。列になって歩く。俯きながら。空にはオレンジと薄い紫が雲を染めてる。静寂。涼しい空気をごつごつした胸に吸い込む。素晴らしい景色だ。日暮の少し前。もうじき夜が来る。あと3日ほど歩かねばならない。


軍事には興味がなかった。僕は田舎の農夫で自然を愛していた。国の皇帝は聡明で賢く、個人的な利益主義で策に興じる人間ではない。少なくとも表面状は。しかし支配者の人間を整理したい習性に巻き込まれるのは堪ったものではない。彼らと無縁で生きて行けたらどんなに素晴らしいことか。


疲れ果てた体をやり切れない思いが蝕んでゆく。じんわりと手足に流れるそれは鉛のように重くなる。


家族への恋しさが募るばかりだ。二度と帰れない覚悟をしていた。


君に会えたら何を言おう。子供達は元気でやっているだろうか。早く会って抱き締めてあげたい。今にも崩れてしまいそうな精神をひた隠しながら、見知らぬ生き残り達の隊列に混じっている。傷を負った彼らと顔を合わせないようにして。中には重篤の者もいる。時折、馬の引く荷台の上から苦しそうに唸る声が聞こえる。美しい夕暮れの中に掠れた呼吸とガタガタと滑車を引く音が続いていた。


帰路を歩く。もうじき夜が来る。