冬の山

彼は冬の山のように



しづかで、寡黙で、自然でありました



深い雪に閉ざされたその山は



その内面に、豊かな生命の息吹を隠し



時に雪崩を起こしながら



晴れた日にはてらてらと輝き



白い呼吸をする山でありました



彼は何かを望むこともなく



病人のやうにじぃっと寝ておりました



彼の纏う冬の霧には



薄っすらとした異様な蠢きを感じます



その細った身体と白い皮膚が



彼の内側で脈動してやまないマグマを包み込み

 

彼は冷たい唇で息を吐き出すのでありました



凍りついた内臓を切り裂くように



しんしんとふりしきる雪の中



ゆらゆらとゆらゆらと



内側に眠る生命とともに揺れていたのです